サユールイトシロのめざすとこ

農園サユールイトシロは岐阜県郡上市白鳥町のさらに北部にある「石徹白(いとしろ)」という地区にあります。

ここで2005年より、無肥料無農薬自然栽培で農業を始めました。

かつては白山信仰の修験道の要所として多くの修験者を受け入れてきた古い歴史と文化をもった土地ですが、同時に近隣の村とは隔離された土地で現在も近くの町まで行くには峠一つを超えるのに車で30分かかるようなところです。

ここ石徹白は岐阜県内でも屈指の豪雪地帯として知られ、近隣にスキー場も2件あります。11月に降り始める雪は2~3mまで積もり4月の雪融けまで畑に残ります。だから畑仕事は4月から11月までの8か月ほどしかできませんし、作物の収穫できる期間はそれよりさらに短く半年もありません。

 

しかし、世の中よくできたもので、そういった農業を営むには大変なところですがここでできる野菜など農作物は、それはそれはとびきりおいしいものができるのです。

どうしてここの野菜や米はこんなにおいしいんだろう?と理由をいろいろ考えました。結論はなかなかでませんがいくつか予想できたものあります。

ひとつは標高700mの土地が生み出す温度の寒暖差です。夏場ではさすがの石徹白も日中は暑いです(それでも30℃を超える日は少ないでしょうが)。いかにも高地らしい、太陽が近いといったジリジリした暑さを感じます。しかし夜になると窓を閉めないと寒くて風邪を引きそうになります。こうした1日の中での温度さが植物の細胞を活性化させます。、また夜間の植物の活動を落ちるため糖などが消費されないためにおいしいといわれます。

しかし僕が思う、もうひとつのもっと大切な理由は水です。この在所より上は誰も人は住んでいません。先ほども上げた毎年冬になると積もる大雪は冬の間ゆっくりゆっくりと融け、少しずつ土の中に沁みわたります。その雪解け水は冬中かけて土の汚れを洗い流し、また雪に含まれる様々な栄養素や微量要素を土の中に供給しているでしょう。そして夏場に至るまで豊富な伏流水やあちこちから湧き出る清水やとして潤してくれます。

 

考えてみると、先ほど上記した人が生活するには厳しさが伴う面が、こと農作物のおいしさにとっては欠かせない条件であったりするのです。こうした土地や気象条件というのはその土地の味というものを生み出す大きな要因なのでしょう。

 

当農園ではいわゆる化学合成農薬はもちろんですが、天然資材を使ったようなものでも農薬の類は使うことはありません。また肥料についても化学肥料は無論、有機肥料と呼ばれるものであっても、圃場の外部から持ってきた資材を畑の中に入れるということはしません。ただし圃場内の草や野菜の残差などからできた堆肥や土などを育苗土として使いそれを圃場の中に戻すことはあります。

なぜ使わないのか?ということに関して言えることは、一言で言ってしまえばその方が野菜がおいしいからです。それにそれらを使うことについて特にその必要性を感じていないということもあります。

農薬や肥料というのはそれが投入される土にとっては異物ですし、水を汚すものでもあります。野菜のおよそ9割は水だといいます。調理する過程でかなりの量が出てしまうことがあっても、その水の良し悪しが野菜のおいしさやに大きく左右することは間違いないと思います。

もう一つ言えば、僕らが住んでいるところは川の最上流です。上流に住む人間の義務としても土や水を極力よごさないようにしたいと思っています。

 

今年は農園を初めて丸10年がたち、11年目に突入します。これを機会に改めて出発点を確認しつつ、次の10年を目指すために新たな取り組みにも挑戦していきたいと思います。このホームページもその一つです。この土地で収穫された野菜が一人でも多くの人の手に渡たり、今日に続く明日のためになってくれれば、これ以上ないことと思っています。

 

2015年4月   農園サユールイトシロ   代表  稲倉哲郎